10年の間に、人は・・・年を取り、病気になり、老いていき、やがて死を迎える・・・
あの揚げ物屋さんの二階に往診に行ったのは10年前だった。
店先にいつも揚げ物が並べてあって、油の匂いがしていた。
店のすぐ横の急な階段をのぼると、畳の部屋があってそこに一人のおじいさんが寝ていた。
ロシア人と日本人のハーフであった。
肺ガンの末期であった。
その奥さんは後妻さんで、二人の間には子供がいなかったが、前妻の間に子供がいて、やはり白人の血が混じっている娘さんがいた。
ハーフのおじいさんが死んで、この後妻さんはすぐに離婚した。
胆石発作があったりして、通院するようになった。
冗談をよくいう楽しい人だったが、孤独だった。
誰も身寄りがいないらしく、その話をすると、応えなかった。
2年くらい前から、言動がおかしくなった。
アルツハイマーが出てきたようで・・・独居で介護を受けるようになった。
アルツハイマーはどんどん進行した。
もう、今では会話もできない。
怖い顔をして、看護師やヘルパーさんに手を出してしまう。
そんな彼女に胆管癌ができた。
黄疸になったが、検査も治療も拒否する、
身寄りがまったくいないから、病状説明をする人もいない。
今は食事だけでクスリも点滴も無しで診ている。
もうすぐ、孤独な死を迎えるだけなのだ・・・・
これでいいんだ・・と自分に言い聞かせながら・・

コメント
コメント一覧 (4件)
それぞれの人にそれぞれのドアがあって
その先は知らないが、それまでの道のりは
それぞれの道のりがある。
あなたはその道のりを感じてかいま見た
その存在を此処に記録しています。
ドアの先に逝った人も行く人もそれはたぶん
幸せなのかも知れません。
みんな誰かに覚えていて欲しいものだと考えます。
それが身よりのないひとならなおさらです。
ドアを通り抜けて行く人を・・
次々と何人も見ています。
しっかりと、みていてあげたいと思います。
それしかできないけれど、それが僕の務めだと思います。
獣道ならぬ人間道が出来ていて、
専門家が見たらすぐにわかる道があるんでしょね。
はい!
僕には人間道が見えるような気がします。
しかし、僕はその道を誰に見てもらえるのだろう?
ふと、最近そんなことを考えます。