80代の老夫婦を往診している。
月に2回、定期的に在宅療養計画書に基づいて往診することを訪問診療と呼ぶ。
マンションの一階にある2DKに住まわれている。
子供たちは、独立している。
夫は、かなりの認知症がある。
心臓ペースメーカーが入っていて、高血圧がある。
妻は高度の亀背があり、立つと頭が背中より下にあるくらい曲がっている。
ドアのベルを押してしばらく待つと、『は~い、すんまへん〜』と言っていつも夫がにこにことドアチェーンを外して開けてくれる。
認知症はあるが、愛想が良く日常会話はできる。
妻はソファに座って、にこにこと笑う
ここにくるといつも、ほのぼのとした空間に僕もほっとする。
二人は仲良くソファに座り、僕は床に座ってお話して診察するのが決まりだ。
奥さんはしっかりしている。
今日のニュースもちゃんと会話になる。
夫はそれを聞いてにこにこしている。
しかし、今日は二人とも鼻水を垂らして、ぐずぐずいっている。
なんだかおかしい。
いつものように診察したが、おかしい・・・
二人とも胸にうっすらと汗がにじんでいるではないか!
こんな老人なのに?
おかしい?
どうも変だ・・・
二人とも風邪を引いたのか?
新型インフルエンザにでもなったのか?
すぐに熱を測っても熱は無い!
それに上機嫌で、照れくさそうに二人とも笑っている。
まさか???
これは、ひょっとして・・・
しばらく考えて・・・・聞いてみた。
『昼ご飯にラーメン食べた?』
『へ~わかりましたか?』
と妻がまた照れくさそうに笑った。
ほっとした。
診断が当たった。
奥の食卓に目をやるとカップ麺の上に箸が乗せてあって湯気が立っていた。
この時間、午後2時半に二人は仲良く昼ご飯を食べていたんだ。
妻は、最近は長く立てなくなって調理もできなくなって、ヘルパーの助けを借りている。
毎日がラーメンでは無いということを聞いて安心した。
壁にはお薬カレンダーがふたつかけてあって、きちんと今日の夕方からのお薬が入っていることを確認して、次の往診に向かった。
往診は楽しい。

コメント
コメント一覧 (3件)
ほのぼの夫婦いいですね。
しかしこの亀の背って、骨粗鬆所に関係しているんですかね。
日本人は多いですね。??
同業者ですね(*^_^*)
私はナースです。ずっと、救急医療に携わっていました。そして発病しました。
頸椎椎間板ヘルニア、昨年7月に5~6番のチタン挿入の前方固定術をしました。
「術前・術後こんなに辛いなら癌で死んだ方がまし」と泣いていたら、仕事復帰、末期癌患者の緩和医療に配属になりました。バチがあたったのでしょうかね?
ずっと調子がよければ、いいのですが、術後1年と三ヶ月まだまだで、修行のうな日々です。
mimihanaさん、コメントありがとうございます。
バチが当たったのではなくて、神様の思し召しですよ。
緩和ケアを考えることは、医療人にとってとても大切なことと思います。
うわべではない本質的なことを考えることは、逆に命を大切に一日を大切に生きていけることにつながります。
そう、思いませんか?
今あるしびれは、消えないけれど、生きていることの喜びはしびれがあっても噛みしめることができます。
あなたの優しい気持ちがきっと患者さんに伝わると思います。
レオン