雨の日に思うこと
彼は、突然に現れた
哀しい眼をし、穏やかな人だった
色黒く、がっしりしているが、しっかりとは歩けない
そうだ、昔に父から話を聞いていたジャンバルジャンはこんな人だったのだろう
哀しい眼をしているのに 穏やかに笑う
いろいろ聞いても、すべてを話さなかった。
診断はC型肝炎からの肝硬変だった。肝臓癌はなかった。
そんな彼が、ある日救急車で搬送された
熱中症をきっかけに肝性脳症に陥って、自室で倒れていたという
そんな彼が元気になって、身の回りのものを取りに帰りたいという
しかし、知人も家族もいないという
遠く博多に弟が一人だけいるという
まだ、ふらついているから一人では外出させられなかった
病院のすぐ近くと言うから、仕方なく、時間を見つけて同伴した。
彼のアパートはすぐ近くだった。
学生アパートのようだった。
道すがら、以前何をしていたのか聞いた
「やくざしてたよ」とにやっと笑った。
5年間留置所にいたという。
半年前に出所したという
何の罪か?聞けなかった。
もっと前は、映画関係の仕事をしていたという。
彼の部屋は、想像していたものとは全然違った
あまりにも、きれいに整頓されていたからだ。
きれいな洋タンスひとつと食器棚ひとつあった
必要最小限だがきれいに そろえられた食器や茶碗が並べてあった
台所もごみひとつ落ちておらず、清潔だった
彼は、スーパーの袋に洗面用具、ひげそり、愛用の帽子、着替えのパジャマ、短パンとTシャツをゆっくりと詰めていった。
彼の背中は大きくてやさしかった。
そんな彼がもうすぐ退院する


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