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癌性疼痛

僕がまだ虎ノ門病院で研修中だった頃。
一人の在イスラエル日本大使館の一等書記官が入院されてきた。
腹痛と背部痛があり、現地の医者に診てもらって急遽帰国。
英文の紹介状からは肝臓のエヒノコッカスが疑われると書いてあった。
肝臓の大きな腫瘤で、他にも大動脈周囲のリンパ節が累々と腫れていた。
CTや血管造影を行ったところ、リンパ節転移を伴った原発性肝細胞癌であった。

まだ40代のバリバリの外交官である。
奥様にありのままの病状を説明した。
当時のことで・・・本人には癌のことは伏せて肝硬変と説明した。
入院当初から背中がひどく痛むらしく、鎮痛剤を経口や座薬でいろいろ出してみたが・・
いっこうに効かなかった。

ある日の夜、看護婦が準夜帯から深夜帯に申し送りをしている最中に、彼は・・
部屋を出て屋上に上がり、6階建ての病棟ビルから飛び降りた。
即死であった。
すぐに呼び出され駆けつけたが蘇生の余地も無かった。
奥さんの同意で病理解剖を行った。
肝臓には広範な癌巣があり、腹部大動脈周囲、膵臓周囲にるいるいと転移があった。
転落のため脊椎骨が竹を割ったように折れていた。
脾臓は破裂して腹腔内は血の海であった。

屋上に遺書があった。1通は僕にあと1通は奥様に。

僕への遺書には・・・
『先生、先立つ不幸をお許しください・・・
自分の病気が悪性であることは気がついている・・・
毎日続く痛みにはとても耐えられない。
痛みのために何もできない・・
生きる希望も湧いてこない・・』         とあった。

僕は自分の非力を嘆き悲しんだ。
彼を助けることはできなかった❗
病気を治すことはできないにしろ、主治医として彼の苦痛を取り除くことができなかった❗

癌性疼痛は最大の治療対象にしなければならない❗
その時以来、僕はそう考えるようになった。
モルヒネをきちんと使うことによって実現可能であることを後で知った。

痛みは必ず、なんとしても、取り去らねばならない❗
競馬好きのおじさんはオキシコンチンで『今日も痛みは無い』と笑顔で応えてくれた。

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この記事を書いた人

コメント

コメント一覧 (5件)

  • 一人の人間が それまで生きていた年月を
    えいじさんは背負ってしまわれることになるのですね。
    何人も。何人も。
    これまでも。これからも。
    「死」という現実を直視して何かを感じ取り 己の胸に刻み込む。
    えいじさんに看取られる患者さんは幸せだと思います。
    えいじさんもお体お大事になさいますように。^^

  • ありがとうございます。
    これから、東京まで講演会を聞きに出張です。
    テーマは『メンタルヘルスケアー』 です。
    勉強してきます。

  • はじめまして。えいじさんが、何人かの方の最後の証人となっている時や、ある方の生き方を見守る証人となっている時の苦悩を遠くから見守っています。
     ある意味、そんなえいじさんを見守る証人?でもあります。
     私はいつも、こうして生きていることが「あ~~、とっても長い夢だったなあ」と言って目覚める瞬間の自分を想像します。今、たった今、ここにある肉体としての自分と、その肉体をずう~~~~っと長い間、遠くから鑑賞しているもう一人の自分がどこかにいるような気がしています。
     私には信じる神様はいませんが、私の大切な知り合い、ジョン健ヌッツオ氏は「今、こうしている自分は、神様のお導きでここにある」といいます。何もかも、すべてが、成功も失敗も、自分の力の及ばないものによって動かされている、と考えると、胸が苦しい思いや痛い思いも、少しは癒されるような気がします。
     えいじさんを遠くから、見ていて差し上げます。

  • あなたのコメントに胸が震えました。
    こんな瞬間に・・・僕は神を感じます。
    どなたかわかりませんが、見守っていてください!ありがとうございます。
    (東京へ出張中で携帯から入力したら文字化けしていました。すみません。それから僕はジョン・健・ヌッツオ氏の大ファンです。)

  • 壮絶なお話ですね。
    人の生死に立ち会われるお仕事大変ですね・・・。
    なぜか、えいじさんのページにたどり着きました。広島県の佐々木と申します。
    「痛みは必ず、なんとしても、取り去らねばならない!」
    まったくおっしゃるとおりだと思います。
    ところで「えいじさん」は
    ご存知でしょうか?
    すべての痛みを1分で緩和する
    低周波治療器「太長寿」のことを。
    もしまだご存知ないようでしたらぜひお試しに
    なってみてください。

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