午前一般外来。
風邪がこじれて気管支炎の人、急性腸炎で下痢がひどい人、インフルエンザの予防接種、良くなった十二指腸潰瘍の人、腹痛で精査予約した人などなど・・・いっぱいだった。
39℃の患者さんで昨日から何も食べられず、急性腎盂腎炎が疑われた人は入院してもらった。この患者さんを診ているときに訪問看護ステーションから電話が入った。
往診に行っている91才の老衰のおばあちゃん(10月8日に紹介した患者さん)が下顎呼吸だと言う。
すぐにおうちに電話を入れる。
独身の三女さんと二人暮らし。
「どうされますか?」
「入院されますか?おうちで看取られますか?」
『考えがまとまらないのでしばらく・・考えさせてください。』
「じゃあ・・午後に伺いますから。」
午後食道静脈瘤の硬化療法。
アルコール性肝硬変の44才の患者さんだ。
出血も少量でうまくいった。静脈瘤に針を刺すときはさすがに緊張する。
硬化療法の最中に三女から電話があった。
『このまま家で看取りたい・・』と
往診に行った。
やはり下顎呼吸だ・・つまりもう数時間の命!
三女の他に長男、長女も集まっておられた。
「もう・・近いと思います。辛いでしょうが本人はもう意識が無く、辛いとは感じておられません・・静かに看取ってあげましょう。」
突然、『辛いです!』と大声で三女が泣いた。介護疲れでやせてしまった。
「僕はずっと付き添うわけにはいかないので、皆さんで看取ってあげてください。呼吸が止まったらすぐ携帯へ直接電話してください。」と伝えた。
病院へ帰って会議中・・・携帯が鳴った。
聴診、頸動脈の触診、瞳孔反射をみて死亡確認をした。
「午後5時10分、ご臨終です」
三女が眼を真っ赤にして泣いていた。
この人はこれからひとりぼっちになるんだ・・
この数ヶ月でずいぶんとやせて小さくなってしまった。
いつも冗談を言う明るい人だった。
なんて声をかけて良いのか・・わからなかった。
帰りの往診車の中で悪寒がして喉が痛くなった。

コメント
コメント一覧 (2件)
謹んで読ませていただきました。
辛い重い現実ですが
医者の仕事としては数多くの一つにしか過ぎません。
えいじさんが書き続けることで
あなたも多分死に行く人も浮かばれると思います。
これを書くことは、おそらく人の心を忘れない為にも
大切なことかと受け止めています。。
お仕事ご苦労様です。
夏海さん、ikellさん、コメントありがとうございます。
僕はもう何人の人々を看取っただろう・・
数え切れない死を診てきました。
山崎章郎氏の『病院で死ぬこと』に大きな共感を抱きました。
そして、日野原重明氏にも影響を受けました。
これからも、人の死の尊厳を守りたいと思います。
医者は患者を治すものと思われがちですが、人の生を見届け、
人の死を見届けなければなりません。
老い、不治の病がある限り・・