その人は、毛糸の帽子を深くかぶり、その帽子からのぞいた髪の毛は紫色であった。
寡黙で、かすれた声で何とか話すけれど、視線は僕を素通りして・・遠くを見つめていた。
同伴した家族は長女とお嫁さんだった。
昨日の午後、大学病院から電話があった。
「誠に申し訳ありませんが、乳房外Paget病のターミナルなんですが・・食べられなくなって
通院も辛くなられたようで、近くの病院でターミナルケアを望んでおられますので・・」
『ご本人は病気の事はご存じで?』
「はい、告知しております・・・ 」
『分かりました。今後診させていただきます。一度診察に来ていただいて今後の事を相談します』
2年前からの闘病とのことであった。
手術もされたが、再発し、抗ガン剤も使用したが、効かなかった・・
肺、骨、リンパ節、肝臓に転移している。
麻酔科専門医でペインコントロールも受けている・・
『これから、僕が担当させていただきます』
『今後のことですが。。短期間入院していただいて、在宅で診ていける方法を考えていきましょう』
「はい・・」とかすかに返事をして、
彼女は車いすから診察台に移るのがやっとだった。
これから、新たな闘いが始まる。

コメント
コメント一覧 (1件)
必ず、別れが訪れる出会いですね。。
私も何度経験したことか。
彼女のラストステージ。。。
少しでも苦しみから開放され
安らかな時を刻むことが出来ますように。。
彼女がレオンさんと出会ったこと。。
それは、きっと神さまの最後のプレゼントなのです。
一緒に闘ってあげてください。