往診で・・・昨日・今日と辛いことが続いた。
昨日は、夕方の会議中に携帯が鳴った。
ある老夫婦の娘さんからの慌てた声だった。
その夫婦は、二人暮らしである
夫は・・・
高度の認知症があり、糖尿病がある。身体的には元気だ。
時に徘徊するが近所だけだから問題になることはなかった。
血糖降下剤は朝夕服用する必要があるが、何とか妻が管理していた。
往診時はいつもにこにこ愛想が良いが・・何を聞いても記憶がないからまともな応えは返ってこない。
妻は・・・
難聴があり、大きな声で話す。
認知症もすこし出てきているから、夫の服薬管理のみならず自分の服薬も曖昧になってきていた。
夫に対する不平不満や、介護疲れをいつも聞かされる。
『わたしはなあ・・・もういやになったんや。こんな人のために・・・』
最近、自分自身もやせてきてむくみが出たり、体動時に喘鳴が出たこともあって検査入院を勧めていたのだが・・夫をみる人がいないし、入院を嫌がるし・・利尿剤で回復してきていたのだが・・
10月11日夕方、仕事帰りに毎日訪問している娘が訪問すると・・・
妻がトイレでうつむきになって倒れていて、すでに冷たくなっていた。
娘はあわてて、病院に連絡したり、救急車を呼んだが、救急隊がみたところ死後硬直もすでに出ていた。
すぐに往診したがやはり死後数時間たっており残念な結果に終わった。
青ざめた娘の横で、夫はずっと愛想良く笑っていた・・・
今日は、別の往診宅。
夫は・・・
全盲で軽い慢性腎不全がある。難聴で認知症もある。
介護ベッドを借りることを嫌がり、ふだんは硬い木のベッドに寝ている。
トイレや風呂には一人で入ることができているが、数ヶ月前には転倒し、慢性硬膜下血腫になり手術もした。
夫の介護をしている妻は・・・
肝硬変がある。
ケアマネージャーが介護保険によるサービスをいろいろ勧めるが、妻は何も利用したがらない。
妻自身も病弱だから、介護軽減のためとデイサービスや訪問介護を勧めるが要らないという。
病状観察のため、訪問看護も入れたいのだが、拒否する。
経済的に困っているわけではない。
家に人が出入りするのが嫌だという
しかたがないので、訪問診療だけでフォローしていたが・・『先生はお忙しいのにそんなに来ていただかなくてもいいんです・・』 というのが口癖だった。
今日、2週間ぶりに訪問したら、随分やせてしまっている。
トイレに行くのもやっとである。
妻に聞くと、『この2週間、毎日吐くんですよ。ご飯も食べなくなったし水も余り飲みません・・』と言う。
何故そんな大事なことを連絡してくれないのか聞くと、『先生を煩わしても申し訳ないので・・』
薬のことを聞くと、『くすりは自分の判断であげてない。トラベルミンがあったからそれだけ呑ませた』と言う。
診察しても、るいそう以外に異常がない。夫本人に問いただしても吐き気は無いと言う
試しにお茶を飲ませると、ごくごくと湯飲みいっぱいを飲み干してしまった。
むせもない・・・
どうもおかしい!!
妻に問いただした
本音を言ってください、ちゃんとご飯や水分をあげてないのではないですか?
『・・実は・・そうです。わたしはもう嫌なんです。早くこの人がいなくなってくれたらと思います。』
と泣き崩れた。
夫には他に身寄りはいない。二人に子供はいない。
妻も誰にも相談せず、自分の病気が不安で将来が不安で・・・
こういう事情でか、介護放棄につながったようだ。
二人を切り離さなければならない
しかし、夫に大きな声で入院とか入所を勧めるが・・『わしは入院なんぞ絶対せんぞ!』という応えしか返ってこなかった。
頻回に往診して、ケアマネに連絡して・・・今後の対策を練るしかなかった・・
現代日本の社会問題なのだろうか?
長寿社会、核家族化、都市化・・・

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