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もうすぐ

もうすぐ、ひとりの老女が亡くなるかもしれない

10年近く、往診してきた。
一人暮らしだけれど、娘さんと息子さんが交代で訪問していた。

月日が流れると、人は老いる

脳梗塞で一度入院して、意識が無かったこともあるが、ほとんど回復した。
それから、三度転んで腰椎や胸椎の圧迫骨折をして入退院をくり返した。
潜行性の多発性脳梗塞も進んで、まだら痴呆も少し出てきた。
それでも、毎日早朝に散歩するのが好きだった。
『杖をついて歩いてくださいね』といつも注意したけど、曲がった腰の後ろで杖を手に持ったまま・・
歩く姿を見かけると訪問看護師は言って、『杖の意味が無いじゃないか・・』と笑ってしまった。
春には桜がいっぱい咲き、小さなお地蔵さんにお参りに行ける小川沿いを歩くのが好きだった。

その老女が重症肺炎で入院した。
肺炎は治癒しかかったかに見えたが・・急性肺障害(ALI)で危篤状態だ。
両肺がすりガラスのように真っ白になって回復しない。
エラスターゼ阻害剤も効果が出ない。
毎日、娘さんと息子さんが来られる。
『何とか助けてください・・』と涙ぐまれる。
『あと数日が峠です。お別れになるかもしれません。覚悟しておいてください・・』と応えた。

意識はしっかりして、訪室すると何も言わないのに『ありがとう・・』と言う
両手を抑制されてマスクをテープで留められて点滴と経鼻胃管とハートモニターと血圧モニターと・・
管だらけだけれど・・笑顔で『 ありがとう・・』と言う。
僕は『もうすぐ楽になるからね・・』と言うしか無かった。

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この記事を書いた人

コメント

コメント一覧 (4件)

  • 一夜明けて。。。この方はどうなりましたか?
    もう楽になられたのでしょうか?
    それとも頑張っていらっしゃいますか?
    この方をおいて札幌へ向われるのなら
    レオンさんは心残りでしょうね。。。
    もし、レオンさんがいらっしゃらない間に、旅立ってしまっても
    彼女はもう十分感謝されていると思います。
    人間は生まれた日に、この世を去る日が決まっている。
    その日が来ただけなのだから。。。。
    穏やかに旅立たれることをお祈り申し上げます。
    だから。。レオンさんも、気をつけていってらしてくださいね。

  • 悲しい事も伝えなければならない、
    それも医師の職務なのですね。
    拝見させていただき、涙が止まりません。

  • 治療の甲斐あって・・
    この方は座って、元気に自分で食事を食べられるようになり、
    笑顔で良く話すようになり・・今後のリハビリを続けるため、介護施設へロングステイに入ることになりました。
    12月2日、娘さんと息子さんに伴われて退院されました。
    本当に諦めずに良かった!

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