団地の一階に3人で暮らしている。
父親は左官工である。
息子が二人いるが兄は家を出て一人で働いている。
弟は、大学受験を3度失敗して、今は家で母の介護をしている。
『イチロー君』とヘルパーさんや訪問看護師は呼んでいる。
確かにイチローに似ていてハンサムだ。
大きくないからミニイチローかな?と僕も言ったことがある。
母は重度の障害で寝たきりである。
脊髄小脳変性症(SCD)でMachado-Joseph病である。
2004年12月8日記事《瞬きだけ》・・の患者さんだ。
遺伝疾患である。
患者は32才の頃に発症したようである。
もう子供が二人いた。
イチロー君は弟だ。
フリーターとも言えず、ニートとでも言うのだろうか?
いつも訪問すると、ヘッドフォンで音楽を聴いている。
一人の世界に浸っているのだろう。
父親は、『ひょっとして・・いつか・・“あれ”が出てくるかも知れないので、働けとよう言わんのです。』と言ったことがある。
雨の日は酔いつぶれて妻のベッドの下で大きないびきをかいて寝ていることがある。
あれから何年か経って、最近、イチロー君が時折ふらついているのだ。
とても25才の青年の身のこなしではない!
酔っぱらいのような歩き方をしているのだ。
気になっていたが父親に言えずにいた。
父親は気づいているのだろうか?
先週、父親とじっくり話してみた。
『はい、気づいております。ここんとこ・・食事中にむせるんですよ。女房が病気になり始めた頃によ~く似てます。あいつはあの頃は坊主だったから知らんのですが・・きっと“あれ”が出てきたと思っとります。』
と歯を食いしばるように言った。
『本人に言いますか?大学病院へ受診しますか?』
重苦しい空気が流れた。
治らない!診断だけがつくだろう・・
イチロー君は自分の運命を受け止められるだろうか?
父親の苦しみが伝わってきて・・僕は言葉を失った。

コメント
コメント一覧 (6件)
読む者をも言葉を失わさせるほどの文章に力が有ります。
この「父親の苦しみ」におそらく答えはないのでしょう。
そして
生きると言う事の現実と戦わなければいけない人々の
事実だけがが横たわっているのですね。
こりゃ、医師も「意志」を強く持つか、「精神科医」にかかるか
しないと身が持ちませんね。
アレックスさんとその廻りに光りあれ!!
ありがとうございました。
コメントありがとうございます。
最近は忙しく、仕事に追われる日々が続いています。
でも・・自分の仕事は日々生老病死に向かっているのだと感じない日はありません。
睡眠薬を飲まないと眠れない日も続きます。
でも、元気に毎日生きていられることに感謝しています。
今日も思い切り、テニスで汗を流してきました。
身近な人の病気を間近で診ていると、いつかはあたしもって、思うひしひしとした恐怖このあたしでもある
周りの人は
「大丈夫、気にしないで」って、ゆうてくれるが
やっぱり普段考えないことでもふとしたときに心の中に沸いてくる・・・
だから今を大事に生きなくっちゃって思う反面、今好きなことをって刹那的に考えてしまうこともある・・・
ごぶさたしております。
「瞬きだけ」の日記で何度か書き込みをさせていただきました。
息子さんもついに・・・
誰に
何に
救いを求めていいか分かりませんね
ところで
意思伝達装置ですが、
こちらのお母様はもう導入されましたか?
業者さんに
いろいろ話を聞く機会がありました。
SCDの方は
なかなか難しいようです。
その理由は、
「振戦」「眼振」「易疲労」だそうです。
そこがALSの患者さんとは違うようです。
いろいろと難しいです。
NAMUNYAKさん、お久しぶりです。
ホームページも時々読ませていただいてます。
おっしゃるとおりで、何度か瞬きの練習をしたのですが、すぐに疲労のせいかできなくなってしまうのです。
あるいは振戦なのか?よくわからないので実は家族とも相談して断念しました。
成功すれば本当に感動的だと思いましたが・・残念でした。
これかからもいろいろと教えてください。
そうでしたか。残念です。
やはり難しいんですね・・・
ALSの方でもよほど強い意志がないとできない
と聞きます。
またいい情報があったらお伝えします!