原発不明の転移性肝癌。74才。
毎週、皮下埋め込みポートから肝動脈カテーテルを通じて抗ガン剤の動注療法を行っているが、縮小する気配はない。
延命効果はあったのかもしれない。
治療はできないが、希望の灯は消せない。
彼には、ありのまま説明し病状を理解してもらっている。
痛みには除放性の経口モルヒネを投与して何とかコントロールできている。
しかし、食事は入らない。
もう歩けない。両下腿の浮腫も出てきた。
訪室すると、『先生、あと何年生きられる?』 と聞かれる。
・・・「わからないね。」
「今、何がしたいですか?」
「やりたいことやりましょう!お酒だっていいですよ」
『酒は嫌いや・・楽しみは競馬だけや・・』
「じゃあ、競馬見に行っていいですよ」
『いや・・行く気はしないな・・新聞見て・・これでいい。この病院の近くのな・・あそこの散髪屋のおっさんも競馬が好きでな~あの人に散髪してもらうのが楽しみや・・
でも、まだ毛も伸びてないし・・。もう少し飯がうまく食えたら・・いいんやけど・・身体がこういう訳やから食欲も出ないわ~』
「そうやね・・でも気持ちも大事ですよ・・楽しいことあったらご飯もきっとおいしくなるしね・・家が良かったら家でもいいよ。往診にも行くから。」
『いいや・・痛いときや吐き気があるときは看護婦さんがすぐ来てくれるから、家よりここの方が安心や・・』
そんな会話はやっぱり辛い。部屋から出ればため息が出た。
彼が苦しまないで毎日を生きてくれることに僕たちは何ができるか?
病棟カンファレンスを行った。

コメント
コメント一覧 (4件)
またまた失礼します。
私はなんでもない一般人ですが。。。
この間、初めて行った歯科医院は素敵でしたよ。
歯の治療中はどうしても上を向くのですが… なんでもそこの院長先生のお話だと、
人間仰向けになると寿命を3時間縮めてしまうそうなんです。「不安と恐怖でいっぱいの精神状態で治療を受ける患者さんの寿命をさらに縮めてはいけない」
と天井に院長のご自宅で飼っている犬や、鳥の絵がかかれているんです。ココロが和みました。
そういう気遣いがとても嬉しくて治療も苦になりませんでした。この先生になら私の治癒力も沸いてくる!って思いました。
立ち入りすぎて本当に申し訳ありません。
悲しいことだけれど素敵な人生を送っていただけたらいいな~
コメントありがとうございます。
そうですね、患者さんの不安を取り除く気配りは常に必要ですね。
日記を読ませて頂き、涙が止まりません。
一生懸命生きた人が、そんな悲しい最期に向かわなければいけない悲しさ・寂しさ。
また、えいじさんの仕事を超えた優しさに、本当に涙が止まりません。
北斗星さん、ありがとう!
あなたの涙こそやさしさにあふれるものですよ。
病棟のスタッフも彼のカンファレンスをしながら涙ぐみます。
ターミナルケアは真摯に生と死を見つめることです。
こういうことを重ねることで、医療の本質も見えてきます。