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往診

91才の女性で娘さんと二人暮らし。
もう5年くらい往診している。
吐血で入院されたのがきっかけだった。
痴呆もある。家の中を何とか手引き歩行で歩けていた。
僕の入院中に、娘さんが買い物で出かけていたところ、自宅内で転倒し、右大腿骨頸部骨折を発症した。
手術したけれど・・以来寝たきりとなってしまった。
おしりとかかとに床ずれができている。
なかなか食事をしない。
エンシュアリキッドを出してみたが余り飲めない。
何とか自宅で看たいという娘さんの希望が強いため、先月末に退院となった。
今日、往診に行ったら、やはりほとんど食べていない。
床ずれも良くなっていない。
ガリガリにやせて、脱水状態もみられる。
これは・・もう近いかもしれない。

そのことをありのまま話した。
娘さんは何とかもって欲しい。入院はさせたくないと言われる。
最後は家で看取りたい・・と。

とにかく栄養が問題。点滴では栄養補給は困難なので経管栄養を行うことを提案した。
鼻からチューブを入れることに抵抗があるようだったが、「このまま看取るのは忍びない」と言われ、チューブを入れることを納得された。
明日訪問看護婦に注入のしかたを指導してもらうことにした。
何とか、回復を祈るばかりだ。

『何かあってもあわてないでください。往診や訪問看護で支えますから・・
しかし入院中のように医者や看護婦が呼べばすぐ来れることはできません。
たいていの場合、看取りは家族の方でしていただくことになります。
もちろん、すぐ駆けつけるようにしますが、事後確認になる場合が多いです。』

娘さんは泣きながら聞いていた。
『長い間ずっと二人暮らしでしたから・・別れが来るのは辛いです・・』 

今日の午後は10件の往診だった。

2ヶ月半ぶりの顔、顔、顔・・
「良かったな~先生~、心細かったよ~」

『長いこと留守にして、悪かったね、もう大丈夫!この通り元気だから』と僕はポパイのまねをした。

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