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この1週間のできごと

この1週間も矢のように過ぎていった。
入院患者、外来患者、往診患者・・いろいろと気になるけど、日曜日のテニスでこころも身体もリセットできた。
また、明日から新しい1週間がやってくる。
89才の腸閉塞のおばあちゃんは、イレウス管を入れて10日目にやっと排便があって保存的に治癒した。
これで3回目だ。大腸検査はして欲しくないという。
手術歴も無い。16日には退院して、また往診で診ていくことになる。
『先生は私の息子や!』 と言う。

老々介護で気になる夫婦がいる。
4月頃に地域の包括支援センターから、往診依頼が来た。
かかりつけ医も全くいないし、受診もさせられないので介護申請もできないのでとにかく一度往診して欲しいというものであった。
往診してみて驚いた。
狭いアパートの部屋は真っ暗で、暗闇から老婆がよろよろと出てきたのだ。
そして、手探りで歩いている。どうやら目が見えないようだ。
玄関口に、夫らしいやせこけたおじいさんが動けずに横たわっていた。

介護申請のための診察にやって来たのだが・・これは大変な状況だと思った。
明かりをつけると、畳はあちこちと汚れていた。
それに、小さな虫があちこちと這っているのだ。
どうやら、ゴキブリの子供のようだった。

奥さんは認知症はなさそうだが・・興奮して言う。
『もう・・私はどうしていいかわからなかったんです。私が悪いんです。もっと、早く医者に診せればよかったのに・・
でも、半年前に近所の人にも頼んで近くのお医者につれて行ったんですよ。だけど、血液検査しただけで、クスリくれただけでこれからどうしていいか何も言ってくれませんでしたよ。だから、役所に相談の電話したんです。
先生が来てくれなかったら、私はこの人と無理心中してました・・・』

夫は高度の脱水と低栄養状態だった。血圧も低かった。ひどい臭いもした。
このままでは、大変だと判断した。
すぐに入院の手配をして救急車を呼んだ。
妻も入院させても良いと思ったが、盲目である他は元気そうだ。
近所の人が見かねていろいろ手伝ってくれるという。
身よりは89才の姉が市内にいるだけという。子供もできなかったらしい。

そうやって、入院させた夫は胃潰瘍とアルツハイマー型認知症であった。
入院して、PPIを投与したら食事はもりもりと食べるようになったが、ひどい認知症で・・
徘徊する。会話もできない。救急指定である当院には長く入院はできない。
看護師も困ってしまっている。転倒、安全のため、やむなく拘束せざるをえない。
認知症専門病棟へ転院依頼を書いた。
今は転院待ちだ。妻は『家で看れませんか?』と聞く。
しかし、どうみても盲目の高齢の妻がこの夫の面倒をみる、介護をすることは介護保険を利用しても不可能と考えられた。

妻は独居となって、訪問診療することにした。
高血圧と視力障害。
視力は明かりがわかる程度で年々ひどくなっているらしい。
早速、近くの眼科に紹介した。
『網膜色素変性症』の診断が下った。
身障者の申請待ちだ。
妻の介護保険は要支援Ⅱであった。
先日、往診すると、顔にあざがあって腫れていた。
家の中は手探りでどこに何があるかだいたいわかるし、風呂にも一人で入れるというが、
大きな冷蔵庫の扉が厄介者でこれを閉めるときに自分の顔にぶつけてしまったという。

まだ、『夫にすまない』と悲しげな顔をする。
この老婆はもうすぐ・・光もみえなくなるだろう。
どうやって一人で生きていくのだろう・・

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コメント

コメント一覧 (3件)

  • はじめまして。atomといいます。投稿ははじめてですが、いつもブログ拝見させていただいています。忙しい毎日の中で気持ちの張り合いを持つことや リフレッシュできる何かを持てることは大切なことですね。レオンさんのように患者さんに好かれる、慕われる先生は貴重な気がします。私も介護に携わっていますが、老老介護の悲惨な現場を見た気がします。こうした老人がレオンさんの様に優しい温かい先生に一人でも多くの患者さんが救われますようにと祈っています。

  • atomさん、こんばんは。
    お返事遅くなりました。
    介護は、現代の大変な課題ですね。
    制度もあるけど、優しい人たちのこころのふれあいが支えだと常々思っています。
    老々介護、認々介護、さらに悲惨でつらいのは独居。
    家族がいても、独居の人がいます。
    高齢者専用賃貸住宅できれいな部屋に望みもしないのに入れられているとしか僕には思えません。
    そんな孤独な老人をみると悲しくなります。
    在宅療養と言えども、画一的な個室です。
    長年住み慣れた家から離れて、部屋の中でその人は浮いて見えます。
    高齢者専用賃貸住宅の幸せそうな老人が載っている広告写真は嘘ですね。
    その人の生きてきた物語がそこにはありません・・・
    悲しい現実です。

  • レオンさん、こんばんは。心のふれあい・・・それは、どんな世界であっても大切なことですね。家庭や学校・・・恋人同士。心がふれあい、通じてなければお互いにとっての幸せがうまれません。環境の整った綺麗な高齢者専用住宅でも、自分の意志でなく入れられた老人はかわい。そうですね。最近はどの地域でも専用住宅などの施設増えてきています。介護者の離職率が高く人手不足なのに・・・介護者もゆとりのない状況で良い介護、心が触れ合う介護ができるのか・・・疑問です。せめて、自分だけは心触れ合う介護を!と日々思い頑張っております。

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