特殊な、まれな病気である。
9年前一人の老人が発熱と全身倦怠感で訪れた。
夫人が心配そうに付き添って来た。
胸水が多量に貯まって呼吸困難の上、全身のリンパ節が累々と腫れている。
高熱が続いて消耗し、かなり予後が悪いと判断された。
これはただ事ではない・・
すぐ入院となった。
だけど・・かなりの医療不信を最初からもっていた。
検査はいやがる。点滴はいやがる。薬も飲まない。
一所懸命説明しても、なかなか納得しない。
やがて、そけい部のリンパ節生検で『多中心性キャッスルマン病』の診断がついた。また、同時に早期胃癌も発見された。
夫人に説明したところ、本人には言わないで欲しいと懇願された。
治療はステロイドが効くかも知れないとわかった。
投与したところ、みるみるリンパ節が縮小し、胸水が消えた。
82才であったため、胃癌の手術も家族は拒否された。
そうやって元気に退院して・・・もうはや9年・・
途中、インフルエンザの予防接種をしたきっかけで再発したが再びステロイド増量で乗り切った。
今は少量のステロイドでうまくいっている。
胃癌は時々、カメラで見ているが驚くべきことに進行していない!
9年も胃癌を観察している。
転移も無い。
その間に夫人が膵臓癌であっという間に他界した。
彼は嘆いた。診察室でぼろぼろと泣いた。
今は独居である。
訪問看護婦が服薬のチェックや生活指導をしてくれている。
もう91才だ。
ステロイドでちょっとmoon faceだ。
これが彼の気に入らないところ・・
『なあ・・先生。これ何とかならんか?かっこわるくてなあ・・。まあ・・薬は飲むで・・。なんとかなりまへんか~。』
「ごめんな。これはしょうがないんや。このおかげでここまで元気やから。」
鮎の解禁が来る頃になるとそわそわする。
毎日、雪駄で自転車に乗り、嵐山や壬生まで散策に行くのが日課。
今は医療不信は全くない。
いつも、にこにこして診察室に入ってくる。
今日も来た。
『今年も鮎釣り行きたいんやが・・いいかな?』と

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