始まりは白黒映画である。
一台のジープが凍てついた冬の荒野を走るシーンから始まる。
長い長い荒野の道を走って、たどり着いた村。
一人の青年が降りる。
父親が急死したのだ。
老いた母親が悲しみの淵にいた・・・
町の病院からこの村まで遺体を引き取らねばならない。
車で連れて帰りたくないと母親は言う。
みんなで棺をかついで思い出の道を連れて帰りたいと言う。
母親が娘だった頃・・・それが回想される。
そこからは美しいカラーだ。
美しい、透き通るような物語が始まる。
村の四季の風景が美しい。
こころに染み渡る音楽が美しい。
純粋な娘のまなざしが心を打つ。
それらが圧倒的な力を持って迫ってくる。
赤やピンクのぶかぶかのどてら、大きな青のどんぶり鉢・・。
草原を嬉しそうに走る・・・走る。
喜びが走り、悲しみが走る。
町からやってきた青年教師に少女は恋をする。
遠くから眺め、遠くから声を聞く。
心はひと時もその若者の元を離れない。
町へ戻った若者の帰りを待って、雪の中で凍死寸前になるほどに・・その思いは強い。
自分の作った手料理を食べて欲しい。
町に帰るまでに、心を込めて作った餃子を食べて欲しい。
大きなどんぶり鉢を持って走る・・走る。
ついに転倒してそのどんぶり鉢は割れてしまう。
どんなに悲しいか・・だれもが泣いてしまうだろう。
『読み書きを学ぶべし・・人、この世に生まれたなら、志あるべし・・』
青年の美しい声が響き渡る。
子供達が復唱する。
朗読する内容がとてもいい。
純粋な魂に入っていく。
結局、父の遺体は100人以上の教え子達が集まり、長い道のりを棺を交互に担いで村に帰ることができた。
主人公はこの娘の一人息子である。
大学を出て教師の資格があるが、都会にいて、独身で、教壇には立たない。
チャン・イーモウ監督自身のことのようである。
母親の父への想いを知る。
母親のため、父親のため、一度だけ教壇に立って朗読をする。
それは父親の声そっくりで、母は感動する・・・
忘れかけている原風景がそこにあった・・・
僕はこの映画を最初、映画館で見た。
感動のあまり、席から立てなかった。
その後、療養中にレンタルDVDで見た。
昨夜、NHKBS2でやっていたのをたまたま見た。
3度目だった。
これほどまでに、美しく、人を感動させる映画は少ない。



コメント
コメント一覧 (2件)
こんばんは。
この映画がとても心に深く響く作品であるとの評判を
随分前から知っているにもかかわらず、まだ観ておりません。
今夜の素敵な紹介文を拝読させていただいて、
何をおいても、早く観なくちゃ…と思いました。
ご紹介、ありがとうございました。
ぜひごらんになってください。
また、感想を聞かせてくださいね。