在宅緩和ケアにとって、介護保険申請をしケアマネージャーがケアプランを立てることが基本的に重要である。また、医師ひとりでは在宅緩和ケアができない。治療ができないからこそ、医師以上に看護や介護が重要なのだ。訪問看護や訪問介護が必要である。今日の往診で『家にいたい』ことが確認できたら、介護申請のこと、ケアーマネジャーさんを早急に決めること、訪問看護を導入することを本人や家族に話をしようと考えていた。
その日の往診では、富山から2週間くらいの予定でやって来たという姪御さんがみえていた。とても心配されていた。患者さんを診る前にいろいろと質問された。ありのままを説明した。前医からも病状説明は受けていたらしく、治療困難であることは覚悟しておられた。しかし、『この男所帯の中でどうやってこれから看ていけば良いのか検討もつきません。家で看るなんてできるのでしょうか?入院させてあげた方が良いのでしょうか?』と素朴な疑問を口にされた。
『女ですから、顔は辛いです・・おばあちゃんはとってもしっかりしていて、家のことは全部やりくりしてきました。 金銭管理も不動産管理も全部やってきたのに、息子さんにも夫にも何も伝えてないのです。』と心配されていた。
その日も本人は、大きな木の食卓に座り、にこにこしていていた。さっきのことは十分に聞こえていない様子だった。やっぱり、『食べられない。すっかりやせました。たぶん30kg。』と言う。『家にいたい』と言う。『入院はしたくない』と言う。『身体が弱ったので、お風呂にも入っていない』と言う。『布団で寝ている』と言う。『トイレはなんとか伝って行ける』という。
『美〇子さん! 気持ちはよくわかったから、家で療養しましょう!ちゃんと毎週往診にくるからね〜。往診以外に看護師さんにも来てもらいましょう!お風呂に入るのを手伝ってもらいましょう!動くのも辛いから介護ベッドも入れてもらいましょう!』と説明した。息子さんも夫も同意された。
『それから、限りある命だから、大事なことは言える間に息子さんやお父さんにきちんと伝えておきましょう!』と説明したところ、『本当に家におれますか? 家にいれるなら、ありがたいです。よろしく御願いします。通帳のことや権利書のことなど大事なことは息子に伝えます。』と、にこにこしながら言われた。姪御さんは泣いていた。
続く)

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