あの人が・・・

ひょっこりと、6年数ヶ月ぶりに受診された。名前も顔もおぼえているが、以前は車いすではなかった。すたすたと歩いてきて、いつも満面の笑顔で話されたのを覚えている。
今日はにやにやされているだけだった。
娘さんに連れられて、車いすで受診された。
年令をみると、95才だった。こちらのこともわかっていない。今日の日付もわからない様子だった。
聞くと、娘さんと二人暮らしで、娘さんは店長で忙しく、もう何年も受診もさせていないと言われる。留守番させられないと言われる。
役所に行って施設に入れる相談をしたのだが、どこか受診をと勧められて、訪問調査も未だ来ないと言われる。受診しないと、介護申請も受け付けられないと言われたらしい。
外来診察の最後近くで、あとひとりの患者さんが待っているので焦った。
受診の理由は、施設に入れたいのだけれどどうしたら良いのかわからず困っているというものであった。
以前の病名は甲状腺機能低下症と骨粗鬆症くらいであった。
6年を経て、アルツハイマー型認知症になったのだろう。歩行困難になったのはレントゲンを撮ると脊椎に多数の圧迫骨折があった。これだろうと思った。痩せてはいない。食べていると言う。トイレは這って行っているが間に合わないこともあると言う。本人に何か聞くと娘さんを振り返る。いわゆる“振り返り現象”だと思った。 
娘さんも困り果てておられるので、入院して、早速退院調整しましょうということにした。
適切な診断と、ADL評価と、今後の介護方針、療養先を探していかなければならない。
入院での主治医にはなれなくなったので、入院での担当医に申し送りをして、ケースワーカーの協力を求めた。実に高齢化社会だ!こんなケースが次々とやってくる。 
介護保険には訪問調査と主治医意見書が必要なのだ。主治医がいなくても意見書作成のためにやってくる。超高齢者に無用な検査や治療は忍びないが、意見書作成のために最小限のことはしなくてはならないだろう。施設に入るまで入院でというと、娘さんはほっとされていた。
 

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この記事を書いた人

⼩宅 映⼠(おやけ えいじ)
趣味は、テニス、写真撮影、音楽鑑賞など

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