特養での診療(SOAP)

特養では、入所者全員のカルテがある。電子化はされていない。
健康管理が目的であり、体調管理が目的である。

カルテ記載は、医療機関に勤務している時からずっとSOAPで記載している。
特養での診療の現状について考えてみたい。

目次

SOAPとは?

SOAPというカルテ記載の方法は、1960年代にアメリカの医師、ローレンス・ウィードによって考案、提唱された。問題指向型の優れたカルテ記載方法である。これによって、論理的で一貫性のある診療記録が記載でき、医療、介護スタッフと情報共有できる。4つの要素から構成される。

  • S(Subjective):主観的情報– 患者の訴えや自覚症状など、患者が語る情報。
  • O(Objective):客観的事項– 検査結果やバイタルサインなど、観察や測定によって得られる客観的な情報。
  • A(Assessment):評価– 主観的・客観的な情報に基づいて、患者の状態を評価・判断すること。
  • P(Plan):計画– 評価に基づいて、今後の治療方針やケアプランを立てること。

S(subject)について

特養入所者は、要介護3以上の高齢者であり、現勤務先の調査では、認知症自立度でⅡa以上の方が90%を占め、50%の方がⅣレベルであった。つまり、正確に自身の体調不良を表現することが困難な方達がほとんどである。
従って、自覚症について本人より聞き取ることは困難な場合が多い。
また、違った表現をされてしまうことも少なくない。
つまり、5W1Hが表現できる方が非常に少ない。いつから、どういうことが、どんな風に、起きたのか?自分で言えない。ほぼ、subjectが聞けない状況でできるだけobjectを集めることに努めなければならない。

O(object)について

日々の生活状況の記録は非常に重要である。体温、血圧、脈拍、食事摂取量、水分摂取量、排泄の状況(尿量、尿の外観、排便の回数や便の性状など)、体重など病棟では熱計表で当たる。
入所者の顔色、表情なども大切であり、入浴時など全身の肌の観察も重要であるので、介護スタッフの観察眼を養うことも重要である。
これらに異変があれば、看護師に伝わり、申し送りにおいて、急な場合は直接に、医師に伝わる。

異変のある方を診察する。理学所見は非常に大事だ。
介護施設ではほぼ検査はできない。理学所見に頼らざるを得ない。
介護スタッフや看護師が提供してくれる情報と理学所見が頼りとなる。

A(assessment)について

それらの情報を統合して、その方の病歴、既往歴、病名、処方薬の状況などを総合して考察をすることになる。
緊急時は大変だ。大切なのは普段から多くを語らない方々のことをよ〜く把握しておくことなのである。
生活状況の変化、異変と理学所見の組み合わせで、自分が持っている知識と経験を総動員して考察する。
おそらく、こういうことが起きているのだろうというところまで持っていればしめたものだ。

P(plan)について

  • 経過観察で良いのか?
  • 病院への紹介を予定した方が良いのか?
  • 緊急で受診させた方が良いのか?
  • あるいは一刻を争う事態のため搬送した方が良いのか?
  • しかし、終末期であれば、ご家族に起きていることを説明し看取り介護にもっていくのか?

を判断しなけらばならない。
グッドジョブとしなければならないししたい。
病棟や外来診療、訪問診療とはまた異なる醍醐味がある。臨床医の腕の見せ所となる。
間違いもあるかもしれないが恐れてはならないし、普段の把握、ラウンドが大切と感じている。

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この記事を書いた人

⼩宅 映⼠(おやけ えいじ)
趣味は、テニス、写真撮影、音楽鑑賞など

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