常勤医は少ない
配置医の多くは非常勤医師のようである。
常勤医率は統計によれば、現在でもおそらく数%と思われる。
非常勤配置医は、他の医療機関(クリニックや病院)から週の内、短時間で働く医師のことである。
仕事内容は当然限られる。(必要な人の回診、意見書など書類書き、看護師からの相談、外部医療機関への紹介状記載なのだろうと思われる。看取り対応はごく限られると推測する。)
特養に医師は必要とされているが、常勤とは規定されていない。特養でも地域密着型は小規模である。小規模特養では常勤医配置は困難だろうが配置された方が良いと思う。
配置医が常勤であるメリット
常勤医であれば、入所者の状態はよく把握できる。入所者の物語(NBM)が把握できる。回診もゆったりとできる。家族との面談も途切れなく行える。看護師や介護士など他職種と連携しやすい。異常の早期発見も他職種と共同してできる。ACPも共有できる。だから、看取りもスムーズにできる。しんどいことも達成感も共有できる。外部への受診も減らせる。従って、職員の付き添いの負担を減らせる。それに、不必要な入院を減らせる。それによって空床率を減らせる。よって、経営改善に貢献できる。良いことばかりだと思う。
さらに、特養常勤医の給与は介護報酬において常勤医師配置加算として点数が決められている。
《介護老人福祉施設で1日につき一人あたり25単位、地域密着型介護老人福祉施設で1日につき一人あたり55単位》自分の給料はそれでまかなえている。
経営を圧迫するとは考えにくく、経営は上向くと考えられるが、常勤医が増えないのは不思議である。厚労省は常勤医配置を進めようとしているからこそ、加算を設けていると考えられるが、約93%の特養が常勤医師配置加算を申請していない。
常勤医配置が少ない理由は?
施設側の理由
施設側からの理由は、「配置医師が必ずしも駆けつけ対応ができない」、「緊急の場合はすべて救急搬送している」ことがあげられた。夜間の看護体制は、「通常、施設の看護職員がオンコールで対応している」が 約88%と大半を占めている。果たして、それが理由になるのだろうか?非常勤で運用しているから、そういう現状になってしまうのだろう。常勤医も一人しかいないから、常時緊急対応などできるわけでは無い。むしろ、普段の把握ができているかどうかが問われていて、スタッフや家族と十分なコミュニケーションがとれていれば減らせる案件になるのではないだろうか?深夜の看取りも朝まで待っていただける可能性も十分ある。常勤医が100%深夜や時間外の看取りを請け負うことは不可能である。できないところは特養同士の常勤医でカバーし合うとか、非常勤医の助けもいただくことは考えていかなければならないだろう。
医師側の理由
医師の側にも要因があるのだろうと思う。
特養常勤医には適性や経験が大切であるのでどんな医師でもできるわけではない。しかし、一方で希望や展望が無いと勘違いされているのではないだろうか?
特養での医師の働きがいが見えていないせいではないだろうか?
医師の仕事としてケアを支えることは重要な役割である。
緩和ケアや訪問診療を多く経験してきた医師は、高齢者の終末期を支えたいと考える筈である。
そういう先生はいくらでもおられると思う。石飛先生が珍しいわけではなく、自分の様に石飛先生の理念に賛同する医師はいくらでもおられると思うのである。
石飛先生のこと
特養常勤医で、まず挙げられるのは「平穏死のすすめ」で有名なあの石飛幸三先生だろう。数年前にNHKでもドキュメンタリー「老衰死 穏やかな最期を迎えるには」でその仕事ぶりが放映されている。樹木希林さんが語りを担当されていた。
最近、石飛先生の著書『穏やかな死のために 終の住処 芦花ホーム物語』を読んだ。ますます共感し、敬服する。見習わなければと思う。
先生は、今年の7月に88歳でお亡くなりになられていたことを知りました。
ご冥福をお祈りいたします。
その著書の中で、特養常勤医の役割として4つ挙げられている。
- 医療の仕分け・・終焉近くになった時に、「この人にどんな医療が必要か?医療はこの人のためになるか?」を判断できる医師が必要。
- 家族を支える・・・医療がわかっていて、なおかつ入所者の毎日をよく知っている常勤医はしっかりとしたACPができる。プロセスを踏んで事務的ではないACPができる。『一緒に乗り越えていきましょう!』と言える。
- スタッフを支える・・・常勤医がケアの方向性を示し、その責任を負うことを明確にしたなら、介護士や看護師は安心してやりがいを維持しながらケアに専念できる。
- フラットな組織をつくる・・・常勤医はケアのチームリーダーであって、指示や命令を出す上司ではありません。コーディネーターなのです。
堀切康正先生のこと
また、最近見つけたサイトで39歳の若き医師が特養で同じような悩みを抱きながら奮闘されていることを知った。『熱血!特養常勤医師奮闘記 1865日の挑戦』 堀切 康正先生である。
石飛先生と同じように考えられ、行動されている。素晴らしいと思う。
他には見つからない。特養医師の横のつながりが欲しいものだ。
情報交換が必要だ。
特養をよくするために!
働く職員を元気にし、入所されている人々を幸せにするために!
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