特養は終の棲家と考えられている。つまり、看取りが当たり前と思われている。
自分も特養に勤務するまではそういう大雑把な概念で捉えていた。
しかし、現実には限られたケース、条件が揃わないと難しいと感じている。
特養で平穏に看取れる場合
特養で平穏に看取れる場合とは、明らかな老衰状態が持続していて、『看取り期(終末期)』と医師が判断した人においてである。『看取り介護同意』があり、『看取り介護計画』があり、毎週『看取り介護カンファレンス』を行い、多職種連携によって平穏な施設看取りが実現できる。
食べられなくなっても、自然に看取ることで御家族は安心される。
トラジェクトリーカーブから言えること

https://medical-saponet.mynavi.jp/news/industry/detail_nursing-home-doctor09/
この図は、堀切先生ご提案の『改定トラジェクトリーカーブ』である。
特養は、要介護3以上で、ほとんどが超高齢者である。高度認知症の割合も多く、食事介助、排泄介助の人が多い。しかし、そういう方達もしっかり食事ができていることが多い。こういう方達は『安定期』に該当する。つまり年齢ではないのだ。100歳を超えていても、安定期の人は結構いる。
しかし、急変のリスクも高いのである。多い急変事象としては、尿路感染症、肺炎、転倒による骨折がある。
多くは無いが、脳卒中、急性胆嚢炎、総胆管結石などもある。
安定期の人が、肺炎や尿路感染症になって、しんどくなるとやはり入院治療は必要であり、かなりの確率で良くなって戻ってこられる。よって、入院治療は延命治療ではなく、お元気に施設に戻っていただく一つの過程なのだ。
これらの急変時には治療が必要と判断され、そのまま特養で看取りに入ることはできない。
いくら100歳といえどもである。看取り期と判定していない人が急に苦しまれる状況を特養において、介護だけで看ていくわけにはいかないのである。
急変時での対応
しかし、この時に気を遣う。家族は『治療はもう結構です』と思われている場合がある。
家族は『辛い処置は受けさせたくない』と言われる。
紹介先の医療機関にも気を遣う。『こんな超高齢者を治療すると言うのか!』と思われていないかどうかである。病院は、『治療を希望しない人を治療することはできない』と言われてしまいかねないからである。
特養配置医は家族に、『まだ、看取りの時期では無いから、一旦治療してもらって良くなって帰って欲しい』と説明するのである。
病院の事情と家族の事情と特養の事情とがある。
病院にお願いすること
医療機関にはお願いしたい。上記、トラジェクトリーカーブを良く理解していただき、安定期の方は治療していただきたいと心から思うのである。
延命を望まれていなくても、ちゃんと治療を受ければ復帰する見込みがある病態なら入院治療していただきたい。
家族にお願いすること
ご家族には、上記トラジェクトリーカーブの意味をよく理解して欲しい。
そして、現状の施設介護、特養での医療体制、看取り体制の限界を分かっていただきたい。
厳しい条件でも特養で看取りを行っていくには
特養でも、取り組まなければならない課題はたくさんある。
不安定期の方をしっかりと家族に説明して、終末期の方への様に平穏な看取りにもっていけるように取り組むことである。
それには、ご家族との信頼関係を築きあげ、スタッフの力量をアップし、スタッフ間の強固なチームワークを作り上げる必要がある。
そして、回復の見込みがないと病院主治医が判断し、かつ、医療機関での対応の必要性が薄いと判断された場合には、家族が了解され、医療処置を必要とせずに苦痛が無い状態であれば、退院して施設で看取ることをスタッフで共有・連携して看取り介護にもっていきたい。
(苦痛症状を取り除くために、終末期であっても医療処置を要すると判断される場合には、家族が延命を希望されていなくても、特養での看取りは困難なのである。)
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