転職して4ヶ月が過ぎた。
日々の仕事の流れができてきた。特養の常勤医がどんな仕事をしているのか、興味のある方もおられると思うのでここに平均的な日常業務を報告することにする。つまり、特養常勤医のルーチンワークの報告である。
(ただし、どこの特養もこういうものなのかどうかはわかりません。)
入所者さんのために、高齢者ケアの充実のために、多くの特養にできるだけ常勤医が配置されることを願っています。常勤医は一人で孤独な時もありますが、入所者さんが健康でおられることや入所者さんの笑顔を見てスタッフと一緒に喜び合えることは嬉しいことです。
朝礼から朝の申し送りまで
朝はたいてい、8時10分くらいに職場に到着する。職員通用口の暗唱番号を押してすぐに医務室に向かう。医務室が自分の居場所であり机があり、ロッカーがある。すぐにPCを立ち上げて今日の状況などを確認しながら着替える。
『入所者一覧表』には特養入所者やショートステイの方の一覧があり、その集計がある。入退所状況や現在入院中の人の名前や数、入院先の病院名、入院日などの情報がA4一枚に整理されている。この用紙は回診時にも携行するのでプリントアウトする。
入院者が少ないと経営的には良いことである。
特養のベッド数は125で、ショートステイ用は15の計140である。
昨年10月以降、入院者が減っている。これは常勤医効果の一つの成果である。入院中の方のベッドは3ヶ月は空けておかなければならないが、ショートステイには利用できる。
着替え終わったら、事務所に出勤の打刻に行き、そのまま広い玄関ホールに行くと施設長はじめ職員が集まってくる。さあ、朝のラジオ体操が始まる。現場から離れられない職種以外はラジオ体操に参加されている。5分で終了しそのあとは朝礼。本日の会議予定や行事予定の報告があり、今日の標語をみんなで唱和する。
9時からは3階詰め所での申し送り、ミーティングがある。介護現場の職種(看護師、介護士、機能訓練士、ケアマネージャー、医師)が集合し昨夜の出来事、気になる人の報告がありミニカンファレンスを行う。その日の回診すべき人をピックアップする。
ラウンド
申し送りでの気になる人、状態の思わしくない人、看取り期の人、近日中にACPを予定している人、近いうちに受診があって紹介状を書かなければならない人、意見書記載予定の人などを回診する。2階と3階の2フロアがあり、それぞれが3つのユニットに分かれているので全部で6ユニットだ。詰め所はそれぞれの階(フロア)にあり、ワゴンにカルテをのっけて自分で押していく。看護師も『つきます』と言ってくれるのだが各自忙しいので気になる人の時だけ看護師に声をかける事として、一人でラウンドすることにしている。
それぞれのユニット毎にタブレットがあり、介護情報が記録され閲覧できる。つまり、体温、血圧、脈拍、食事摂取量、水分摂取量、排泄状況、体重(1/月)などが分かる。認知症の方が多いので、人を間違えないように自分のスマホにあるNotionデータベースを見て、顔写真を確認しながらラウンドする。大体は覚えた。全身状態をタブレット情報や理学所見、顔色や表情などで把握する。会話もその人に合わせて行い。時に面白い話になって、介護士も大笑いになることもある。カルテに所見を記載し、看護師に指示のある場合は指示棒を挟みこむ。
新規入所者の診察と家族面談
新規に入所される人がある場合はあらかじめ相談室から各種情報が紙面で医務室に届けられる。それで予習しておいて、病歴サマリーやNotionデータベースに情報を整理して入力しておく。入所当日はまずその人を診察する。その間に、相談室職員から家族・キーパーソンに各種説明がある。その中には、『施設での医療体制の説明』や『終末期についての意志確認書』について文書を手渡し説明がある。その後で医師と担当看護師とで家族・キーパーソンと面談する。上記の説明を丁寧に行い、終末期に至った場合の延命処置の希望を確認することにしている。新規のショートステイ利用者には診察を行い病状把握を行う。
各種書類作成
書類書きは多い。定期受診の人では、生活状況報告や医療面での気になることなどを紹介状という形で必ず書くことになっている。いわゆる診療情報提供書ではない。そもそもこちらは医療機関では無いので診療情報提供には当たらない。同行する家族がいても普段の暮らしぶりは家族からは主治医に伝えられないのだ。この時にワイズマンの介護ソフトからの『温度板』が役立つ。一月分の生活状況やバイタルサインなどが分かるからだ。複数科に受診している人はその科毎に記載する。主治医からは短いが丁寧な返書が返ってくる。この紹介状は非常勤配置医も分担してくれるから助かっている。
介護保険制度の主治医意見書は、受診先の主治医が書くのではなく特養の医師が書くことになっている。その人のかかりつけ医だからだ。月に5〜6名づつ位だから苦にならない。ワイズマンの介護ソフトに意見書記載用のものがあるが使いづらく、日本医師会の『医見書』ソフトをインストールしてもらい記入するようにしている。
(ワイズマンの介護ソフトはなかなか使いづらい。ユーザーフレンドリーにはできていない。まるで役人が作ったみたいである。画面も硬く暗く見たいところにたどり着くまで何工程もクリックする必要がある。とても介護現場での使いやすさや多職種連携、チームケアを大事にして作られているとは思えないもので、介護報酬制度にのっとって作られていて『加算第一主義』に見えてしまう。)
入所者は最長15年の人がいる。個々のカルテでその人の病歴はまとまっていないものが多い。2024年10月以降入所した人は自分が病歴やカルテを整えているが、それ以前の入所者の病歴サマリーを整理して書き直す必要があった。入所者をきちんと把握するためには必須の作業になる。まとめていく内に多くの気づきがある。
データベース(Notion)のメインテナンスも必要だ。統計には一覧表が、回診にはフロア毎にお顔の画像が並んでいるギャラリービューが役立つ。現在の状況(安定期、90歳以上、不安定期、看取り期、坦がん者、入院中など)ステータス別でわかりやすい。医務室ではPCで、回診中にはスマホでも見れるのでとても役立っている。しかも無料だ。
未だ、SNS的な使用はできないがケアマネさんは連絡をくれるようになった。ミーティングやカンファレンスがあり、情報共有はリアルタイムではないができている。時間外に仕事をすることになるのは避けたいのでこれで良いと思っている。
各種会議への参加
施設の運営会議は、『施設ミーティング』という会議で月に2回開催される。重要な事柄が話し合われるので必ず出席するようにしている。組織がきちんと運営されている。
『入所判定会議』は毎月1回あり、入所希望者の一覧表にある情報で検討していく。入所の優先順位を決める。『給食委員会』では、検食当番の感想やら各現場からの要望・意見が出され、食事内容が細かく検討される。ケータリングを利用しているので会社の人も出席される。
『事故対策委員会』では、インシデント、アクシデントを事例毎に検討する。センサーマットなどあってもどうしても転倒事故はある。重大なことにならないように予防が大切だ。
誤薬も少ないがある。うっかりは困りものだ。
『終末期委員会』も軌道に乗った。
『感染対策委員会』にも出席している。今期インフルエンザにかなりヒヤヒヤしたが、早期に面会禁止などを取り、今期コロナもインフルエンザも施設内流行は無かった。両者陰性の急性上気道炎が多かった。
『ケアカンファレンス』にもこれから極力出席するようにしようと思っている。何しろ、家族と顔を合わせる絶好の機会だから。
『ACP』は不安定な人にはする様にしている。看取り期に入った人は毎週ケアカンファレンスが開催される。
時間外・休日体制について
午後5時30分で自分の勤務時間は終了する。
時間外と休日は看取りの人がいればオンコール体制となる。しかし、他はよほどのことが無い限り電話は鳴らない。特養医師は主治医ではなく、かかりつけ医だからだろうと考えている。急変しても医療機関では無いのでなんともできない。時間外の急患受診や搬送はスタッフ(介護士、看護師、業務課職員など)がやってくれる。
看取りに関しては、常勤医が365日、24時間対応できることはあり得ない。たまに旅行に行くなど京都に不在の時もある。その場合に対しては、業務課の努力で非常勤医師との連携がしっかりとれるようになった。連携体制がとれて看取り対応が365日、24時間体制になったわけである。従って、看取り加算も手厚い方になった。
常勤医は、きちんと病歴をまとめておき、申し送りをしなければならない。ACP記録、『看取りの同意書』、『看取り指示書』、『看取り介護計画書』を整備しておかなければならない。
家族には、夜間に亡くなられた場合、朝まで死亡確認を待っていただけるかどうかも確認をするようにしている。
非常勤医師も高齢であったり、午前診療や夜診をされていたりということもあるので朝まで待っていただけるのは大変ありがたいことである。
また、常勤医の休暇保証をしていただけることも大変ありがたいことである。
以上、特養常勤医4ヶ月目のリポートでした。
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