特養は『終の棲家』とよく言われる。周知のことと思われる。利用者本人も家族からも期待が大きいと感じる。
しかし、施設での看取りは容易ではない。きちんとした体制がとれていなければ叶わないことである。
看取り介護を行えるケアチームができていることや、中心になる医師がいなければ叶えられない。常勤医になって一ヶ月であるが、看取りはすぐにでも取りかからなければならない。3年前に常勤医がおられた頃は施設看取りが行われていた。しかし、非常勤体制となってからは施設看取りが無くなり、ほぼ全員関連病院に入院の上で看取られていた。
終末期委員会を設置する
看取り介護を実施するために、委員会を設置した。第1回目の会議を行った。多職種から出席してもらい、顔合わせをした。相談室からは、『利用者さん・家族からの看取り希望が多いが実際は叶えられていない実態』が報告された。『看取りができないことを説明すると他の特養に行ってしまわれるケースもあった』との事だ。看護師からは、『常勤医がいない間は看取りができなかったこと、介護士との連携が必要であること』が報告された。介護部責任者からは、『新人もいて看取りの経験が無い介護士も多くいること、死生観や看取りの教育が必要と感じていること』が報告された。
今後、委員会を進めるには、事務局が必要と思われる。事務長に提案し相談室と看護師から1名づつ事務局メンバーになってもらおうと思う。看取りの流れができるまでは定例で開催し、一定の流れができたら不定期で委員会を開催しようと思う。
『看取りに関する指針』を改定する
元々、施設内にはほぼ完成された『看取りに関する指針』があった。平成18年4月に制定され、平成27年7月に改定されたものが存在した。手直しすることもほとんど無さそうであるが、年月を経ており、次回改定するかどうか意見を聞いていくことにした。「看取り介護同意書」や「看取り介護計画書」、「看取り介護指示箋」なども様式があったがこれも見直していくことにしよう。
《全国国民健康保険診療施設協議会》が出している、【施設での看取りに関する手引き】を参考に、各種様式を整備していくことにしたいと思う。
様式とは、「終末期の医療についての事前調査書」、「当施設における医療体制の説明書」、「看取りに関する医師意見書」、「看取りに関わる費用算定に関する同意書」、「意思決定支援用紙」。「ACP記録用紙」などである。
ACPによる意思決定支援を丁寧に行っていく
2007年に公表された人生の最終段階における医療の決定プロセスに関するガイドラインでは、終末期医療及びケアのあり方について「医師から適切な情報の提供と説明がなされ、それに基づいて患者が医療従事者と話し合いを行い、患者本人による決定を基本としたうえで、終末期医療を進めることが最も重要な原則である。」としている。本人の意思が最優先される。しかし、特養の入所者の多くは何らかの認知機能低下を有している。
同ガイドラインでは、患者の意思が確認できない場合は、以下のプロセスを重視している。つまり、「家族が患者の意思を推定できる場合には、その推定意思を尊重し患者にとって最善の治療方針をとることを基本とする。家族が患者の意思を推定できない場合には、患者にとって何が最善であるかについて家族と十分に話し合いをもって最善の治療方針をとることを基本とする。」ここで家族とは法的な意味ではなく、患者が信頼を寄せていて終末期を支える人という広範な意味での代理意思決定者のことを言う。代理意思決定者には大きな苦悩を伴う場面が多い。この時には代理意思決定者だけに判断を委ねるのではなく、本人にとって何がいちばん望ましいのか?これまでの生き方や価値観と照らし合わせて代理意思決定者と共に悩み、責任を分かち合う姿勢が必要と思われる。
看取りを確実にするためには複数医師体制が必須
125人を、365日24時間、看取りのために常勤医一人が拘束されることはあり得ない。時間外、休日、夜間や早朝の看取りは多いと推定される。常勤医一人では無理であろう。
常勤医は、日常的にACPを行い、患者や家族との信頼関係を築き、多職種連携でケアチームを作り上げておくことが重要な任務であろう。代理医が困らない様に整備しておくことが重要な仕事と心得る。時間外での死亡確認は一人では持続不可能である。常勤医が看取れない場合は代理医が必要である。
幸い、近くで開業されている先生は当社会福祉法人の理事をされていて、ご挨拶に伺った時に、思い切って看取りの話を持ち出して御協力を打診してみた。すると、快諾されたのでびっくりした。『○○のためなら頑張るよ!きちんと設定しておいてもらえるならやります!』という内容だった。とても感激した。
あと、もう一人の非常勤医師に今度お願いしてみようと思う。看取り医師団ができれば、強い味方になる。
展望が見えてきた。
コメント
コメント一覧 (2件)
小宅先生 ご無沙汰しております
りんご届きました!!
職員一同、喜んでます
ありがとうございました
こちらこそ、ありがとうございました。
特養でも頑張っています。ようやく慣れつつあります。
秋の味覚を皆さんで味わってください。