特養の常勤医が処方できない謎が、いろんな人に聞いてようやくわかってきた。
グーグル検索すると、特養では医療保険が適応されないこと、初診料や再診料や往診料、各種指導管理料も算定できないが検査や処方はできると記載されている。『介護保険と医療保険の給付調整』で可能であると理解される内容にとどまっている。この謎の『介護保険と医療保険の給付調整』というウルトラCで、介護保険からでも処方が可能と思い込んでいたが、どうやら違う理解であったようだ。
施設長からの回答
施設長からは、「保険診療として診療報酬が支払われるには次の条件を満たさなければならない」として、その条件を
① 保険医が
② 保険医療機関において
③ 健康保険法、医師法、医療法、薬事法等の各種関係法令の規定を遵守し
④ 『療養担当規則』の規定を遵守し
⑤ 医学的に妥当適切な診療を行い
⑥ 診療報酬点数表に定められたとおりに請求を行っていること
とされていると指摘があった。「特別養護老人ホームの入所者に対して、保険診療として薬剤を投薬する。」には、「保険医療機関において診療に従事する保険医」がそれを処方する必要があるものと推察されるという回答であった。つまり、常勤医は医療機関に所属していないので入所者に処方はできないということになるとの指摘であった。
元勤務先医事課からの回答
一方で、元勤務先の医事課部長に問い合わせてみた。いろいろと調べていただき、以下のような回答を得ることができた。「特養内で、処方を行うには、医療機関の届出や医療機関での保険医の登録が必要です。」というものであった。
医療機関としては、2種類想定され、
①特養の医務室を保険医療機関として届出、保険医の登録を行い、特養の診療所として医療を行う。
②併設の病院や診療所があれば、併設医療機関からの非常勤配置医として医療を行う。
現在は②の非常勤医師が処方をしている訳である。医療機関に属し、保険医登録医である。一方で全国でも数少ない常勤医のいる特養では医療機関に属していないはずである。だから、大抵は医務室を診療所として登録しているのである。大きな規模の特養では、たいてい診療所が開設されている。外部の患者さんは診療しない入所者のための医療(主に処方)を行う診療所としてである。検査はそうそうしないし、レントゲン設備もあるはずがない。それこそしてはいけない医療行為であるだろう。そもそも、特養は医療機関ではなく介護施設なのだから。特養はいろんな矛盾に満ちていることがわかった。
もし、常勤医である自分が処方をしようと思ったら、特養の医務室を保険医療機関として診療所を開設しなければならないことになるらしい。京都府、京都市、近畿厚生局、保健所等に相談した方が良いらしい。また、保険請求をするに当たっては、京都府社会保険診療報酬支払基金、京都府国民健康保険団体連合会、生活保護等の保険に届出が必要となるらしい。特養の入所者については、算定できない点数や「配置医師」や「併設医療機関の医師」が算定できない点数が定められていること。初診料・再診料等の診察料や、特定疾患療養管理料・生活習慣病管理料等の医学管理料や、施設入居時医学総合管理料・在宅患者訪問診療料・在宅自己注射指導管理料等の在宅医療等の算定ができないことは知られている。算定できないと定められている点数以外の検査・処置・院外処方等は算定できることになる。
具体的には、診察を行い検査・処置・院外処方を行った場合は、診察料(初・再診料)・医学管理料などは算定できず、検査料・処置料・処方せん料のみ算定できることになる。
初・再診料の算定ができないので、レセプトには特記事項欄に「09施」と表示させ、配置医師の診療回数を摘要欄に「配 〇回」(〇には数字を入れる)と記載するようになっているらしいことがわかった。
常勤医のいる特養では、診療所を開設しないと常勤配置医は処方はできない
結論はこうなる。『常勤医のいる特養では、診療所を開設しないと常勤配置医は処方はできない。』
特別養護老人ホームに常勤医師配置加算などが算定され、厚労省は特養に常勤医師配置を促進しようとしているが、現場の状況では処方をとってしても煩雑な手続きが求められていて、結局は介護施設に診療所(医療機関)を開設しなければ処方はできないということである。
『介護保険と医療保険の給付調整』というような謎の文言を言うのではなく、最初から診療所を開設しないと処方はできないと何故言わないのだろう?行政とはこういうものなのだろう。
常勤医としてまだ2週間であり、今後、当特養で常勤医体制が長く続くと保証されているわけでは無いので、診療所開設の方針は現実的には困難なのだろう。持続可能なものでなければならないのである。
前常勤医の時代に診療所開設については検討されていなかったのだろうか。今後、この規模の特養には常勤医は必須と考えられる。看取り率も常勤医がいないとかなり低下するだろう。常勤医師配置加算も設定されているので、途切れない常勤医師体制が求められる。
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