特養に常勤医として就職して2週間が経過した。新しい環境に慣れるのは大変だ。医療施設から介護施設に変わった訳だから、まごつくことが多い。治す場所からケアする場所に変わったのだ。
社会福祉法人に入職して
特養入所者125名、ショートステイ15名の大型施設である。同じ建物の上層階はケアハウスがあり、隣にはグループホームもある。大型複合型施設と言っていいのだろう。施設見学だけでも1時間以上はかかる。
怒濤のオリエンテーション
それぞれの各部署からの説明もしっかり時間を取り丁寧にあり、就業規則や個人情報保護の誓約書も記入した。総合施設長から1時間もの丁寧な説明、講話があった。沿革、歴史、理念、課題、目標、経営状況など細かく説明があった。介護に取り組む姿勢が真摯に感じられた。
戸惑いから解決すべき課題へ
さすがに140人は多い。顔も名前も覚えるのに大変そうに感じる。バイタルサインと食事摂取量などは電子化されて見れるが、カルテは紙カルテなので、困った。時間がかかる。看護師も細かいところは把握するのが大変そうである。
常勤医となったが非常勤の応援も並行して行われるから、ほっとした。受診者の紹介状のやりとりはしっかりされている。しかし、いろいろと矛盾点も気がつき、課題も見えてくる。3年前まで常勤の医師がおられた。その医師は15年間くらい勤務されていたらしく、看取りもされていた。80歳で退職されたと聞いた。カルテを見ると丁寧な紹介状を書かれていた。サマリーもしっかりと書かれている。真摯な取り組みをされていたんだなあと関心する。しかし、非常勤医師だけの体制になってからは看取りは無くなっている。全て、関連病院に搬送して看取っている。家族からの『ここで看取って欲しいのに』という苦情もあるようであった。前常勤医に追いつくことがまず必要だろうと思っている。
最大の疑問は処方に関して
オリエンテーションの時に、特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)では医療保険は使えないことをしっかり言われた。もちろんそのことは知っていた。昼間の看護師でできるような医療行為はニーズとしてあり、特養でも対応できていた。しかし、前常勤医の時代から、常勤医は処方ができないということであった。処方は関連病院から配置されている非常勤医師ならできるということになっていた。また、外部受診も多くある。入所前からの主治医に入所後も通院して処方されていたり、配置医の専門以外の専門医療を必要とする方は当然外部受診されていた。入職までは、特養でも処方はできると調べて思っていた。しかし、回答は『施設の持ち出しになるからできません』という事だった。
もう一度、調べ直してみたがやはり必要に応じた処方箋の発行は医療保険で請求可能となっている。配置医は初診料、再診料、往診料などは算定できないが、処方箋料、検査料、処置料は請求できることになっている。
何故、非常勤の配置に処方ができて、常勤医にはできないのだろう?苦し紛れに考えたのは、かかりつけ医と主治医を分けて考えているのだろうか?ということだった。主治医は主に病気を治す立場、かかりつけ医はその方の健康管理をし、最期までケアをサポートしていくことだというのこととしているのだろうか?だから、処方箋の発行は非常勤医師の所属する医療機関から行われているのだろうか?
しかし、納得できない。処方に関していちいち非常勤医にお願いしないといけないという事になる。常勤も非常勤も同じ配置医に該当し、資格は同じであるはずと思う。もう一度、しっかり調べて欲しいと事務長に申し入れた。
自分の思い描くイメージは、処方箋を特養から発行し、提携する調剤薬局から配薬してもらうようにすれば良いのだろうと思う。調剤薬局の立場から調べてみた。そうすると実際に特養と連携している調剤薬局はあった。連携状況は、調剤薬局の約15%、特養の75%という報告があった。(令和5年度、薬局薬剤師による介護事業所との連携に関する調査研究事業)
薬局としても保険請求ができるようである。2016年度調剤報酬改定で、特養患者に対する薬剤服用歴管理指導料(38点)が新設され、外来扱いが可能となった。同指導料以外の点数についても外来と同様の点数が算定できることになっている。さらに今年度の改定で施設との連携加算もとれるようになっていることがわかった。(施設連携加算)
従って、特養常勤医も非常勤医も同様の扱いで処方は可能ということと思われる。事務長の回答、施設長の回答が待たれる。
看取り介護に取り組もう
特養入所に関しては、相談室が頑張っている。つまり、入り口は相談員や事務方が頑張っており、課題は無いようだ。問題は入所されてからの事である。外部受診が多いこと、入院者が多いこと、看取り対応ができないため関連病院に搬送して看取っていること、このために空床が出てしまうこと。ショートステイで穴埋めはある程度できるが経営には厳しいと思われる。家族の希望に添えず、施設での看取りが行われないために入院での看取りとなっていることが大きな課題である。
看取り介護委員会を立ち上げよう
表現は良くないが、きちんとした出口が必要である。本来の特養の出口を整備することで経営にも、利用者さん、家族にも貢献できると信じる。入所時の事前説明から、入所中の面談(ACP)、終末期の流れ、多職種連携などを整備していこうと思う。とにかく、実績を積み上げていくことから着手しよう。一人で、365日24時間対応できるわけが無い。非常勤医との連携も大きな課題となるだろう。できるところから始めるしかない。平穏な看取りが少しずつできれば、家族にも安心され、看護職、介護職の達成感につながり、モチベーションは上がると信じている。
大型特養の入所者の情報共有をどのようにするか?
さらに課題はある。紙カルテをなくし、ICTを根付かせたい。リアルタイムの多職種間情報共有を実現したい。
しかし、あせってはならないだろう。時間が必要だ。じっくり取り組むしか無い。
読者の皆様へ:間違いや参考になることがあれば是非教えてください。よろしくお願いいたします。
コメント