はじめに
2024年10月1日に特養常勤医師となってから2025年5月末までの入所者データを解析し、整理してみた。
期間中の入所者に関する情報をNotionで手作りしたデータベースから抽出して分析を行った。
入所者の年齢層、性別、入所期間、入所経路、退所内容、ステージ別、認知症の程度、キーパーソン、外部受診の有無、医療処置内容、既往歴などの分析を行った。
(1)年齢、性別、入所期間、入所経路
対象期間の入所者数は136名で、そのうち男性は38名(28%)、女性は98名(72%)であった。


年齢層は71歳から101歳の間で、平均年齢は男性84.8歳、女性90.6歳であった。
《参考:日本人平均寿命(2024年)は、男性81.1歳、女性87.1歳》
当施設利用者は、男女とも平均寿命より約3.5歳上となった。
平均入所期間は1191日(約3.26年間)でした。男性平均は995日(約2.73年間)で女性平均は1266日(約3.47年間)となり、男性より女性が長く入所されている。男女共に、年齢と入所期間に相関関係は認めなかった。


(2)入所経路について
入所者の主な経路は在宅と老健施設が多く、次いで病院退院後が目立った。
入所経路による入所期間の差は図の通りです。介護度に違いはなかった。

2024年10月1日から2025年5月31日(8ヶ月間)の入所者は、男性3名、女性16名の計19名で、その平均年齢は86歳(男性84.3歳、女性86.6歳)であった。
入所経路としては、老健施設7名で最多、在宅5名、グループホーム3名、ケアハウス、サ高住、病院からそれぞれ1名ずつであった。月平均約2.4人が入所されている。
(3)退所内容について(8ヶ月間での)
8ヶ月間の退所者数は計15名あり、内訳は施設内看取りが1名、入院後死亡退院12名、その他の理由による解除が2名(生死不明)であった。月平均約1.9人が退所されている。
施設内看取り1例は急性疾患ではなく老衰によるもので、他のケースはすべて急性の体調不良により入院された方であった。

入院後死亡ケースの具体的な内訳としては、心不全4件、肺炎2件、肺がん1件、老衰1件、尿路感染症1件、血栓症1件、不明2件であった。
入院から死亡までの期間は最短4日間~153日間でした。平均期間は下図の通りであった。


(4)ステージ分類の内訳(2025年5月31日時点)

2025年5月末時点では、看取り期該当者なし。安定期94(男25<女69)、不安定期18(男2<女16)、担癌者7(男5>女2)、入院中(男0<女2)常に流動している。


(5)認知症の状況について
認知症は、なし~Ⅳまでで、下図の通りである。
ほとんどの方が認知症を有しており、高度の方は半数に及んだ。認知症の内訳では、多い順に、老年期認知症、アルツハイマー型認知症、血管性認知症、レビー小体型認知症、その他であった。

(6)キーパーソンの状況について
キーパーソンは、子供が全体の7割と多く、配偶者が1割、子供の配偶者7%、孫や姪など親戚が6%、同胞4%、後見人が4%であった。

(7)外部受診の状況について
56%が定期外部受診をされています。精神科回診は大変心強いところです。臨時受診は随時あり、今回は内容を分析することはできなかった。定期外部受診先である医療機関の内訳は、関連病院Aが最も多く、次いでBであった。


(8)医療処置内容について
医療処置内容は下図の通りで、膀胱留置カテーテルが約7.5%の入所者さんに入っている。
褥瘡ケアは4例と少なく、程度も軽いものがほとんどであった。
表皮剥離や閉塞性動脈硬化症による下肢の皮膚潰瘍などの処置もあった。

(9)主な既往歴について
主な既往歴をNotionからキーワード検索で求めましたところ、図16のようであった。多くの入所者が過去に骨折、尿路感染、脳卒中、肺炎を経験されている。癌の既往歴を有する方が18名おられたが、治癒しているケースも多くあった。

まとめ
- 男性より女性の入所者が多く、入所期間も女性の方が長かった。
- 入所経路は老健と在宅からが多かった。毎月平均2人ずつの入退所があった。
- 退所理由は入院後死亡が多く、施設看取りは少なかった。老衰で枯れるような看取りは少なく、食べられていた方が急に体調を崩し入院後亡くなられるケースが多かった。
- キーパーソンは子供が多かった。
- ほとんどの入所者に認知症が認められ、高度認知症は約半数に認められた。
- 2人に1人が外部定期受診を受けられていて、4人に1人が複数科を受診されていた。外部定期受診先は2人に1人が関連病院Aで4人に1人が関連総合病院Bだった。
- 医療処置内容は膀胱内留置カテーテルが多く、経管栄養は無かった。
- 既往歴では、骨折が約半数の方にあり、次いで尿路感染、脳卒中、肺炎、癌、心不全、尿路結石などであった。
看取りについては、ACPを行う中で、「平穏な看取りを望まれている方が圧倒的に多い」ことを改めて感じた。
「看取り介護」体制が整えられたが、 施設内看取りは未だ1例のみであった。
今後、さらなる経験や実践を積み重ねて行く必要がある。
コメント