私は昭和26年生まれである。物心ついたかつかない頃に祖母は自宅で老衰のため亡くなった。添い寝をしてもらっていたから祖母の匂いを覚えている。田舎でのことである。介護制度など無く、どこのお家でも自宅で世話をして自宅で亡くなる人が多かった時代だったと思う。
介護の歴史を調べると、戦前、戦後はいわゆる「養老院」というところが老人ホームの先駆けなのだろう。生活保護法の前身である恤救(じゅっきゅう)規則が明治7年に制定され、公的な救護施設「養老院」として始まった。民間や宗教施設によるものだった。
1950年施行の生活保護法でこれらが「養護施設」となった。高齢、貧困者への社会福祉事業として先駆的に取り組まれたものである。これが、1963年の老人福祉法によって 「養護老人ホーム」となり、その時に「特別養護老人ホーム」ができた。高度経済成長時代からやがて急速に進行する少子高齢社会へと我が国は移り変わっていった。
1997年に「介護保険法」が制定され、2000年から「介護保険制度」が実施された。「特別養護老人ホーム」は「介護老人福祉施設」と言われるようになった。その後3年おきに改定がされて現在に至っている。
京都市右京区で、29年間往診を続けてきた。当初は介護関係の建物や車両を見かけることは当然ながら皆無であった。しかし、今では朝夕と介護関係車両が街中を行き交う状態は当たり前になり、あちこちにデイサービス施設やサ高住、グループホーム、訪問看護ステーションを見かける。さらに、コンビニの数ほどではないが”家族葬の施設”が目立ちはじめている。まさに少子高齢多死社会が到来していることは疑いようのない事実である。
最近は、こういった日本の姿に外国、特に東南アジアから注目をされ、”介護先進国”として介護制度を学ぼうとされているようである。
老人福祉法の概略
老人福祉法には施設として7つ、老人居宅生活支援事業として6つを規定されている。
【7つの施設】
- 特別養護老人ホーム
- 養護老人ホーム
- 軽費老人ホーム
- 老人介護支援センター
- 老人福祉センター
- 老人デイサービスセンター
- 老人短期入所施設
6つの老人居宅生活支援事業
- 老人居宅介護等事業
- 老人デイサービス事業
- 老人短期入所事業
- 小規模多機能型老人共同生活援助事業
- 認知症対応型老人共同生活援助事業
- 複合型サービス福祉事業
介護保険法の概略
高齢者の介護を社会全体で支え合う仕組み。
基本的な考え方は、自立支援、利用者本位、社会保険方式である。介護保険サービスは、65歳以上の者(第1号被保険者)は原因を問わず要支援・要介護状態となったときに、40~64歳(第2号被保険者)の者は末期がんや関節リウマチ等の老化による病気が原因で要支援・要介護状態になった場合に、受けることができる。
要介護判定は、(一次判定)として、認定調査員による心身の状況調査(認定調査)及び主治医意見書に基づくコンピュータ判定を行う。(二次判定)として、保健・医療・福祉の学識経験者により構成される介護認定審査会により、一次判定結果、主治医意見書等に基づき審査判定を行う。この結果に基づき、市町村が要介護認定を行う。
様々な介護サービスがあり、大きく分けると介護給付を行う居宅介護サービス、施設介護サービス、予防給付を行う介護予防サービスがある。市町村が行う地域密着型サービスも細かくある。
施設介護は、介護老人福祉施設(特養)、介護老人保健施設(老健)、介護医療院、グループホーム、ケアハウス、サービス付き高齢者住宅、有料老人ホームなど様々な施設がある。
訪問診療を続けてきて思うことは、年々、居宅介護を受ける人が減少してきて施設への往診が増えてきていることである。
施設介護を選ぶためのフローチャート
核家族化が進み、在宅での療養が困難な方が増えている。
そこで、介護施設を選ぶことになる。どういう視点で選んでいくのか?
ケアの内容はもちろん、コストも気になる。最期まで看てもらえるのかも気になる。
下記のフローチャートのように選択されることになる。
気になるのは、経過で変わることがあるということ。施設側も経時的変化を考慮して介護の内容や体制を考えておく必要がある。経済的なことはそう変わらないだろう。変わるのは介護度や認知症である。歳がいけば介護度は上がり、認知症はやがて出てくることが多い。そうなると、医療はむしろ控えるべき時期に来る。薬も減らす方が良くなることが多い。癌が疑われてきても検査や治療はたいそう困難になる。延命は希望する人は少数いる。希望しない人が圧倒的に多いと思われる。どの施設であっても平穏な看取りが可能であって欲しいと思う。
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